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浸潤性乳癌を患った犬猫における条件付き生存率を算出した研究

投稿者:武井 昭紘

乳癌(mammary carcinomas、MCs)は、小動物臨床において、ごく一般的な腫瘍性疾患である。故に、犬猫がMCsと診断された後の生存期間や生存率に関する研究が盛んなのだ。しかし、人医療と比べると、ある一定の月日を生き延びた彼らの生存率、いわゆる「条件付き生存率」を考えた文献が乏しいのが現状と言える。

そのような背景の中、フランスのナント大学らは、外科的に病変を切除したMCsの犬と猫、それぞれ340匹以上を対象にして、1年間生き延びた時の生存率(条件付き生存率、conditional survival、CS)を算出する研究を行った。すると、犬において59%だった診断時の生存率が80%に上昇することが判明したという。一方で、猫では、診断時の48%が52%と微増に留まることが明らかになったとのことである。

上記のことから、乳癌の犬が1年生き延びた時、その後の生存率(CS)は大きく改善することが窺え、それは猫に当て嵌まらないことが分かる。よって、残念ながら猫には適応できないが、乳癌の犬を診察する際は、落胆するオーナーに一筋の希望の光を、つまりCSは高いことをインフォームド・コンセントしてみると、彼らと愛犬を励ませるかも知れない。

今回紹介したCSは、年齢、病期、リンパ・血管への浸潤、マージンの取り方で変動し、腫瘍サイズと組織学的グレードの影響を受けないことも明らかになったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32954630/


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