3月19日、世界的に有名な科学誌Scienceのウェブページにアップされたオンライン記事によると、ロンドン郊外に位置する動物病院Ralph Veterinary Referral Centreが「ある現象」に気が付いたという。なお、それは、同院の循環器診療で起きた、犬猫の心筋炎症例の急増だそうで、2020年12月~2021年2月の3ヶ月間における出来事だとのことである。そう、既にお気付きの方もおられるかも知れないが、この時期というのは、イギリスで新型コロナウイルスの変異株による感染拡大が発生したタイミングだ。一体、英国で何が始まっているのだろうか—–。
冒頭の「急増」に懸念を示したRalph Veterinary Referral Centreは、心筋炎に陥った犬猫11例の診療記録を公開した。それによると、全ての症例に嗜眠、食欲不振、呼吸促迫、失神が認められ、彼らは肺水腫および不整脈を起こしていたという。また、3例がPCR検査陽性(検査は7例で実施、変異株を示す配列を確認)、他2例が抗体検査陽性であったとのことだ。
3月15日に報告された犬猫の感染事例(テキサス州)と合わせて、今回紹介したイギリスの事例を見詰めると、英国で生まれた変異株は犬猫に感染すると考えることが妥当だろう。では、どのような症例がアメリカの事例のように「くしゃみ」など軽症で済んで、どのような症例がイギリスの事例のように心筋炎など重症化するのか。今後、ヒトにおける感染拡大に準じて続々と上がってくるかも知れない感染事例の報告を基に、そのファクターが解析され、犬猫のCOVID-19に対する治療法・予後判定法が確立されていくことを願っている。
参考ページ:
https://www.sciencemag.org/news/2021/03/major-coronavirus-variant-found-pets-first-time