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愛犬に与える食餌の種類とオーナーの食餌に対する認識を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

自家製食や生肉を愛犬に与えることが、彼らの健康を維持するために必要だと主張するオーナーは珍しくない。では実際のところ、これだけペットフードが流通する世界において、彼らは何の根拠を持って、そう言い切るのだろうか。それを突き詰めることは、犬の健康を守る上で、大変に重要なことである。また、仮に根拠があるのだとしたら、犬の予防医療(犬を病気にさせない獣医学)の発展のために、その根拠を我々獣医師・動物看護師が学ぶべきなのではないだろうか。

 

冒頭のような背景の中、イギリスのグラスゴー大学は、犬を飼育するオーナー400名以上を対象にして、加工したペットフード(commercially prepared cooked diets、CCDs)と生肉ベースの食餌(raw meat-based diets、RMBDs)に関する見識を聴き取る研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆愛犬が食べる物に関するオーナーの見識◆
・70%以上が食餌管理について獣医師と相談している
・約25%がRMBDsを与えている
・RMBDsを与えるオーナーは獣医師の知識が不足していると評価している
・また彼らは自分の知識が優れていると思っている
・RMBDsを与えるオーナーの73%以上がRMBDsは栄養価が高いと回答した
・一方でCCDsを与えるオーナーでCCDsは栄養価が高いと回答したのは約半数である
・全てのオーナーがCCDsはヒトへの健康被害を起こしにくいことに同意した
・RMBDsはヒトまたは犬に健康被害を齎すと考えているヒトが居る
・その割合はRMBDsを与えるオーナーで20%未満、CCDsを与えているオーナーで65%以上であった
・RMBDsを選ぶオーナーにその理由を聞くと、曖昧な回答が返ってくる
・CCDsを選ぶオーナーにRMBDsを避ける理由を聞くと、具体的な回答が返ってくる。

 

上記のことから、RMBDsを愛犬に与えるオーナーは生肉の栄養価の高さを信じて疑わず、それを認識している自分自身を高く評価し、疑問を持つヒトを低く評価することが窺える。しかし一方で、その根拠を述べる場面になると、『健康的だから』、『良いと思うから』といった曖昧な主張になってしまうようである。つまり、RMBDsを与える科学的な根拠は提示できないということだ。果たして、RMBDsとCCDs、どちらを与えることが、犬の健康維持にとって「より」良い選択なのか。更に議論が尽くされていくことに期待している。

RMBDsを愛犬に与えるオーナーのうち、CCDsの栄養価が高いと回答した割合は、約13%だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33354417/


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