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口腔内から重度の出血をした犬が抱えていた解剖学的異常

投稿者:武井 昭紘

8ヶ月齢のビーグル(雄)が、救急外来を訪れた。主訴は、口からの出血である。原因は、重度の歯周病か、腫瘍か、はたまた外傷か。それを突き止める診察が行われた。すると、考えられる疾患(鑑別疾患)のいずれにも該当しないことが判明した。一体、彼の身に何が起こっていたのだろうか—–。

 

口腔内を診たところ、舌先に拍動する紫色の病変があった。CT検査で詳しく観察すると、それは、右舌顔面静脈の拡張を伴う動静脈奇形であることが判明。そこで、これが出血の原因と判断した獣医師は、病変へと走行する動脈を結殺した。しかし、残念ながら、出血は治らなかった。そのため、最終的には、舌の一部を切除する手術で解決を図ったという。切除した組織の病理検査はというと、やはり動静脈奇形であったとのことである。

 

これを受け、王立獣医科大学は、このビーグルを世界初の症例と位置付けた。動静脈奇形によって口腔内出血を呈した犬は、これまでにないと同大学は述べる。果たして、口からの出血が認められる犬のうち、動静脈奇形を抱える症例は、どれ程の割合で存在しているのか。口腔内出血の鑑別疾患をアップデートするためにも、その有病率が算出する研究が進められることに期待している。

舌の部分切除から13ヶ月、本症例は良好に経過したとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33113561/


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