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オーナーが持っている心肺蘇生に対する認識について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation、CPR)と聞いて、読者の皆様はどのようなイメージを抱くだろうか。生死を彷徨っている動物が助かるシーン。あるいは、一直線に伸びる心電図の波形の下で動かなくなった動物が居るシーン。また、救命しようと懸命な病院スタッフの慌ただしい姿を思い浮かべるかも知れない。何をイメージするか。それは、そのヒトの経験や知識によるところが大きい。ならば、覗いてみたくはならないだろうか。心肺蘇生と聞いて、動物を飼っているオーナーが思うことを。

 

そのような背景の中、ミッドウェスタン大学は、オーナーらのCPRに対する認識を統計学的に調べる研究を行った。なお、同研究は、大学付属動物病院を訪れたオーナーを対象にしており、半年間で約300件の回答を得ているという。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆オーナーたちのCPRに対する認識◆
・90%以上のヒトがCPRの定義を知っていた
・しかし犬猫のCPRの方法を知っていたのは11%であった
・80%以上はCPRを要するペットの状態につて話し合いたいと思っている(来院時に)
・無事退院できる可能性は40%前後と見積もっている
・医療系ドラマを見ているヒトは、見ていないヒトより、その可能性が高くなっていた
・その予測は持っている知識に基づいている(約70%の回答者)
・CPRを望んだヒトが想定する費用は257±365米ドルであった
・CPRを望まなかったヒトでは491±875米ドルであった

 

上記のことから、オーナーたちは、CPRをしなければならない状況を「まず説明して欲しい」と考えていることが窺える。そして、彼らの中には、費用を気にしてCPRをするかしないかの決断をしているヒトが居るようだ。つまり、生死を彷徨う命を1秒でも早く救いたいという獣医師や動物看護師の気持ちは痛いほどき分かるのだが、そのためには、充分な状況説明と概算の提示が重要だと言えるだろう。

(画像はイメージです)
本研究が、オーナーと動物病院スタッフの「より良い」コミュニケーションを実現するキッカケになることを願っています。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32588977/


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