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慢性鼻炎の犬における消化器病変とそれを治療した時の経過に関する研究

投稿者:武井 昭紘

気道症候群を発症した短頭種が消化器症状を呈している場合、その罹患犬が抱える気道症候群を外科的に治療すると、消化器症状も治る。これは、論文として報告されている事実である。つまり、呼吸器のトラブルが解決されると、消化器のトラブルまでも解決するのだ。両者の間には何か見えないリンクが存在しているのだろうか。実に不思議なことだと思う。しかし、どうやら、この呼吸器と消化器の現象は、気道症候群を発症した短頭種に限ったことではないようなのだ。

その「もう一つ」の現象は、トリノ大学らによって報告された。具体的には、同大学は、慢性特発性リンパ形質細胞性鼻炎(Chronic idiopathic lymphoplasmacytic rhinitis、CILPR)の犬25匹を対象にして、彼らの胃腸に認められる病変(内視鏡検査により探索)と消化器症状の有無、そして、消化器症状に対する治療歴を追跡したという。すると、88%の症例で病変が見付かり、52%の症例が消化器症状を呈していることが明らかになり、更に、消化器症状に対する治療を経験した症例の大部分において、呼吸器症状も改善していることが明らかになったとのことである。

上記のことから、冒頭の現象の逆、消化器のトラブルが解決されると呼吸器のトラブルまでも解決するという現象が起きたことが分かる。一体、どのような関係で、犬の消化器と呼吸器は繋がっているのだろうか。生命の神秘に触れているようで、非常に興味深い。今後、その謎が解明され、両分野(消化器科と呼吸器科)が共に発展していくことを期待している。

ヒトのCILPRでも、同様の現象が起きるとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32618401/


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