特別展示が開催される時に良く行く博物館の帰り道。そこには、筆者なりの楽しみが広がっている。何か特別なイベントやスペースがある訳でもないし、取り分けヒトの目を引くオブジェがある訳でもないが、赤トラ柄の猫が佇んでいるのである。いわゆる地域猫というものだろう。おそらく、餌を貰えるタイミングを待っているのだ。その愛らしさを見掛ける度に、撫でたくなる。
しかし、実際のところ、撫でる決心をするまでには月日を要した。彼に近付いて手を伸ばしたとして、その時に避けられでもしたら、かなりショックだからである。嫌がられずに撫でるには、どうしたら良いだろうか。思案するも上手い答えは出てこない。
そんな時、一つの論文に出逢う。イギリスの大学らが発表したものだ。それによると、目は感情を伝える重要なコミュニケーションツールだという。具体的には、瞼を半分閉じるところからスタート。次いで、ゆっくりと目を細める。そして、閉じる。この一連の行動を猫が真似たら、アイコンタクトが成立。手を差し伸べると、猫が近付いてくる確率が上がるとのこと。
今度、試してみよう。と同時に、これは、臨床現場でも使えそうな手法だなと思う。猫に嫌がられず近付きたい時、そうしなければ診察にならない時、有効な「手」なのではないかと。読者の皆様の中に、もしも猫に苦手意識を持っている獣医師いるならば、是非その有用性を検証して頂けると幸いである。
参考ページ:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33020542/