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北米にて初めて報告されたダニ麻痺を呈した猫の1症例

投稿者:武井 昭紘

2歳齢の猫(去勢雄)が、四肢の筋肉が弛緩して麻痺しているようだということで動物病院を訪れた。突然の発症だったという。また、診察をするも、X線検査および血液検査(生化学、CBC)では明らかな異常が見付からなかったそうだ。そして、トキソプラズマ感染症、重症筋無力症の検査へと進む。しかし、原因の特定には至らず。果たして、この猫に何が起きているのか。ヘビ毒や有機リン系の中毒か。あるいはボツリヌス菌が原因か。いや神経炎では—–?

 

こういう時は、基本に立ち返る。そう思ったのか、同院スタッフは再び身体検査を始める。すると、猫の頚部腹側にマダニが付着していることが判明。本症例は、駆除薬の投与によって快方に向かい、5日後には普段の動きを取り戻したとのことである。

これを受け、今回紹介した猫は急性ダニ麻痺と診断された。北米では初めてのケースだ。

 

神経学的な異常を認める動物を前に、色々な病気、そして様々な検査が頭に浮かぶかも知れない。しかし、そうであっても、身体検査を疎かにしてはならないことを、本症例は教えてくれていると思う。読者の皆様は、身体検査にどれくらいの時間を掛けているだろうか。原因が特定できない疾患を抱えた動物を診察する際は、「その検査」の重要性を改めて考えて頂けると幸いである。

駆除薬は、フィプロニルと(S)-メトプレンが配合されたものだということです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33117555/


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