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発作を呈する犬が「てんかん」と診断される割合について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

王立獣医科大学(Royal Veterinary College、RVC)が運営する大規模臨床データベースVetCompass™を用いた研究によると、臨床獣医師が「てんかん」を診断する手法と、専門家が推奨する手法との間には、大きな隔たりがあるという。しかし、現在、一次診療施設における診断の流れの実態を調査した研究は少なく、その隔たりを客観的に表すデータに乏しいのが実状である。

 

そこで、RVCは、VetCompass™に登録された犬の診療記録45万件以上を解析し、「隔たり」を明らかにする研究を行った。すると、以下に示す事項が判明したとのことである。

◆一次診療施設における「てんかん」の診断◆
・約0.6%の症例(2800件強、これを母集団とする)に発作が起きていた
・発作を起こしやすい犬種は、ラブラドール・レトリバー、スタッフォードシャー・ブルテリア、ジャック・ラッセル・テリア、ヨークシャー・テリアであった
・国際獣医てんかん特別委員会(IVETF)が提唱する診断基準を満たす罹患犬は母集団の約20%であった
・しかし、一次診療施設で「てんかん」と診断された犬は約9%であった
・IVETFの診断基準(又はそれに同等の基準)に照らし合わせて診察された犬は約50%に留まっている

 

上記のことから、「隔たり」が明確になったものと思われる。では、何が原因で、このような状況が生じているのだろうか。診断基準が臨床現場に即していないのか。あるいは、一次診療施設に勤める獣医師が診断基準を充分に理解していないのか。今後、更に研究が進められ、「隔たり」を無くす対策や卒後教育プログラムが考案されていくことに期待している。

発作を呈した犬(母集団)の約70%に、抗てんかん薬が処方されていなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.rvc.ac.uk/vetcompass/news/vetcompass-study-explores-the-classification-diagnosis-and-clinical-management-of-seizures-in-dogs


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