ニュース

子犬の健診で心雑音を見逃している確率を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

『心臓の聴診に自信がない。』

健康診断あるいは予防接種前の診察で子犬を目前にして、冒頭のような感情を抱く新人獣医師は少なくないであろう。当然のことである。子犬の息遣いが聞こえる中で、正常な心音を見極めて雑音があるかないかを探る、そのような熟練した聴診には経験が必要なのだから。そこで、本稿では、子犬の聴診が如何に難しいのかを実感してもらうべく、ある研究を紹介したい。なお、それはオランドのユトレヒト大学が報告した研究だ。

 

同大学は、初めに、300匹を超える子犬(生後34-69日)の聴診を一次診療施設に勤める獣医師に依頼した。次に、その9日後、彼らの聴診を循環器診療専門医と獣医学生に依頼した。すると、一次診療施設の獣医師が聴き分けられた心雑音は、専門医が聴取した雑音97件のうち僅か1件のみであったことが判明したという。また、後二者で判別した心雑音は一致性に乏しかったとのことである。

上記のことから、子犬の心雑音を聴取することは非常に難しいことが窺える。よって、聴診に自信がない新人獣医師は、それ程に困難な壁にチャレンジしているのだと考え直し、専門医に並ぶくらいの経験を積み重ねていって頂けると幸いである。

本研究で示された「難しさ」を念頭に置いて、日々の聴診を「慎重に」行っていきましょう。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32586343/


コメントする