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異物によって腸が閉塞した犬における手術のタイミングと転帰に関する研究

投稿者:武井 昭紘

『うちの子が、食べ物じゃないものを飲み込んだ。』

このようにオーナーから連絡を受ければ、消化管内異物が疑われるだろう。つまり、消化管の切開を伴った異物摘出術を実施しなければならない可能性が出てきたということだ。しかし、オーナーが即、手術に同意するかは別の話である。消化管内異物と診断してから手術に臨むまでに、タイムラグが発生するかも知れない。そこで、疑問に思う。診断から手術に至る時間と、手術の難易度あるいは動物たちの経過には、関連性があるのだろうか—–。

 

前述のような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、850件を超える、異物によって消化管が閉塞した犬の診療記録を、①診断から6時間以内に手術をした症例と②6時間以上経過した後に手術をした症例に分けて、統計学的に解析する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆手術のタイミングと症例の経過◆
・約74%の症例が①、約26%が②に該当する
・消化管が壊死または穿孔するリスクファクターは下記の通りである
a.症状が続く時間の増加
b.乳酸値の上昇
c.紐状異物
d.手術が遅れること
・①では回復(食べられるようになること)と退院時期が早まる
・②では腸を切除する確率が高まる
・②では麻酔と手術に要する時間が長くなる

 

上記のことから、診断から手術までの時間を早くすることは経過を良好にし、その時間が遅れることは手術の難易度と麻酔リスクを上げることが窺える。よって、手術を検討するべき症例に遭遇した際には、ボーダーライン(診断から6時間)を意識して、インフォームド・コンセントを実施するとともに、治療計画を立てることが望ましいと思われる。

本研究では、①②どちらのグループにも、異物が見つからない症例が含まれていたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32979240/


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