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ストレスを感じている犬の唾液中に含まれるアルギニンバソプレシンの濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

ストレスは、ヒトを含む動物が悩まされる身体的あるいは精神的苦痛であり、動物の体に様々な反応を齎すことのある原因でもある。例えば、アルギニンバソプレシン(Arginine vasopressin、AVP)。この物質は、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸を構成するメディエーターで、攻撃的な犬やPTSDを抱えるヒトの血液中に増加する特徴を有しているという。一方、話は変わるが、近年になって唾液に含まれる成分の解析が進んでおり、唾液は、血液に代わるサンプルとして注目されている。つまり、2つ事象を総合すると、犬の唾液中のAVP濃度を測定することは、彼らのストレスを評価するマーカーの開発に繋がるのである。

 

そこで、韓国の大学は、以下に示すような刺激を犬に与え、①ストレスが多い群と②少ない群における唾液中AVP濃度の変動を比較する研究を行った。

◆犬に与えた刺激◆
・実験室への車移動
・獣医師による身体検査
・サンプリング(検体採取)
・30分間続く騒音

すると、②に比べて①では、血圧、体温、心拍数、呼吸数が大幅に上昇するとともに、唾液中AVP濃度が有意に低下することが判明したとのことである。

 

上記のことから、唾液中AVP濃度は、犬が感じているストレスを評価するマーカーになり得ると考えられる。よって、今後、同居動物や新生児(ヒト)が居ること、病気を発症していることなど、様々なストレスを受けている犬を対象にして唾液中AVP濃度が測定され、その有用性が検証されていくことに期待している。

①と②は、ストレスに関連した行動をスコア化して分類されております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32917190/


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