ニュース

進行性網膜萎縮を発症したラサアプソから新しく発見された遺伝子変異

投稿者:武井 昭紘

進行性網膜萎縮症(progressive retinal atrophies、PRA)。
それは、RPGRIP1(Retinitis pigmentosa GTPase regulator-interacting protein 1)やPRCD(Progressive rod-cone degeneration)などの変異によって生じる進行性の眼科疾患で、ダックスフンド、レトリバー種、スパニエル種等々が罹患し、最終的には失明に至る遺伝病である。そして、ここにチベット原産の小型犬ラサアプソも含まれる。しかし、どうやら、この犬種に起きるPRAは、以前に報告の上がっているものとは異なる遺伝子の変異が存在しているようなのだ—–。

 

なお、この発表を行ったイギリスの獣医科大学らの研究によると、①PRAを発症したラサアプソ3匹と②発症していないラサアプソ3匹のゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study、GWAS)を実施したところ、①では、第33番染色体上のIMPG2遺伝子に、long interspersed element-1 (LINE-1) と呼ばれる配列が挿入していたとのことである。加えて、123品種(440匹以上)を対象にした遺伝子解析によって、同変異はラサアプソのみに生じていることが明らかになったという。

人医療において、IMPG2遺伝子は、網膜疾患に関与しているとされている。そして、この遺伝子に「挿入」が起きている唯一の犬種がラサアプソだ。果たして、IMPG2遺伝子と犬のPRAとの関連性とは、一体。今回紹介した新発見が、当該疾患の発症メカニズムの解明と治療法の開発に繋がることを願っている。

遺伝子頻度は、0.07〜0.1だとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32894063/


コメントする