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膵臓の外分泌に生じる腫瘍を発症した犬が抱える膵臓の炎症を解析した研究

投稿者:武井 昭紘

膵臓の外分泌に発生する腫瘍は、犬では非常に稀である。しかし、この腫瘍によって起きる症状(嘔吐など)は、犬に一般的に見られる膵炎のそれと酷似している。また、同疾患を抱える症例は、炎症の有無を確認する臨床検査にて陽性となるとも言われている。つまり、膵臓の外分泌に発生する腫瘍と膵炎の鑑別は難しいということだ。では、実際、当該腫瘍によって犬膵特異的リパーゼ(canine pancreatic lipase immunoreactivity、cPLI)が上昇するケースは、どれ程の割合で存在しているのか。 それを明らかにすることは、小動物臨床の消化器診療レベルを向上するカギになるものと思われる。

 

そこで、ドイツの動物病院らは、以下の通り病理組織学的にグルーピングされた犬を対象にして、cPLIを測定する研究を行った。

◆膵臓の病理組織学検査によるグルーピング◆
①正常な膵臓を持つ犬
②軽度の膵炎に罹患した犬
③中程度~重度の膵炎に罹患した犬
④膵臓の外分泌に発生する腫瘍を抱える犬

すると、本研究で実施されたcPLIの測定法は、①の92%以上を参照値に収め、②③の検査結果から感度が約91%に達することが確認されるとともに、この測定法でcPLIを測った④の約83%が陽性になることが判明したとのことである。

 

上記のことから、膵臓の外分泌に発生する腫瘍を抱える犬は、膵炎を併発している可能性が高いことが窺える。よって、今後、腫瘍を伴う膵炎と伴わない膵炎を鑑別するための検査法が開発・商業化されることを期待している。

病理組織学的には、④の75%に膵炎が確認されたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32379386/


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