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犬猫の中毒性疾患に関する疫学を明らかにした研究

投稿者:武井 昭紘

3年前に発表された「北米で飼われているペットに中毒を起こす原因物質ランキング」によると、TOP10は全て人体薬(医師からオーナーに処方された薬剤)で占められていることが分かる。つまり、ペットの中毒の実際というものは、大学で教えられる様々な化学物質、植物、食品を原因として起きるのではなく、オーナー自身が服用する薬の管理に問題があって起きるのである。果たして、学校で教えてくれない、その実態とは。それを明らかにした研究が、オンタリオ獣医科大学によって発表された。なお、詳細は以下の通りである。

 

◆犬猫の中毒に関する疫学◆
・ペットの中毒に纏わる情報を扱うAnimal Poison Control Centerのデータを解析した
・データは10年間分(2005~2014年)である
・中毒症例は24万件以上に昇る
・そのうち、86%は犬、14%は猫であった
・犬の中毒は、人体薬、食品、農薬によるものが最も多い
・猫の中毒は、人体薬、動物用医薬品、植物によるものが最も多い
・食品はチョコレート、植物はユリによる中毒が最も一般的である
・犬において、最も高い致死率を誇るのは、フルオロウラシル(抗癌剤)による中毒である
・猫において、最も高い致死率を誇るのは、ビフェントリン(ピレスロイド系殺虫剤、農薬)による中毒である

 

上記のことから、冒頭に記したランキング同様、人体薬による中毒が頻発していることが窺える。また、ハロウィンやクリスマスを控える、これからの季節はチョコレートに注意をした方が望ましいようだ。本国では、どのような疫学の基に、犬猫の中毒は起きているのだろうか。今回紹介した研究のような統計学的解析が日本でも実施され、小動物臨床で活かされることに期待している。

(画像はイメージです)
フルオロウラシルおよびビフェントリンによる中毒の致死率は、何れも65%を超えております。

 

参考ページ:

https://avmajournals.avma.org/doi/abs/10.2460/javma.257.5.517


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