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消化器の外科手術を受けた犬猫に起きる手術部位の感染に適した抗生剤に関する研究

投稿者:武井 昭紘

一次診療施設でも、ある一定程度の頻度で実施されているであろう犬猫の消化器外科において、最も注意を払うべきポイントの一つに「手術部位の感染」が挙げられる。故に、この感染を防止するために、周術期に抗生剤を使用する獣医師は少なくないと推察する。しかし、それでも、手術部位の感染は起きることがあるのだ。果たして、その原因と何であるのか。あるいは、周術期に使っている抗生剤は原因菌に効いているのか。これらを一つひとつ解明していくことは、獣医学の課題だと言える。

 

そのような背景の中、ペンシルバニア大学付属動物病院は、270例以上の、消化器の外科手術を受けた犬猫を対象にして、手術部位の感染の有病率および原因菌の同定(薬剤感受性を含む)を調べる研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆消化器の外科手術を受けた犬猫に起きる手術部位の感染の実態◆
・約7%の症例に感染が起きていた
・検出された主要な原因菌は、大腸菌であった
・周術期に使用された抗生剤は、セフェム系であった
・原因菌は、クロラムフェニコール、イミペネム、ゲンタマイシンに感受性を示した

 

上記のことから、手術部位の感染を起こす大腸菌には、周術期に使用される抗生剤が効かないことが窺える。よって、消化器外科の症例に手術部位の感染が発生した場合には、薬剤感受性を実施することが望ましいと思われる。また、今後、皮膚と消化管、双方の切開創からの感染を考慮しつつ薬剤耐性菌の現状を反映した、周術期に使う「最適な」抗生剤が再選定されることに期待している。

本研究を発表したペンシルバニア大学付属動物病院によると、大腸菌は消化管由来であるとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32779226/


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