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前十字靭帯断裂の手術を受けた犬における手術部位感染と細菌尿の関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床における外科手術、特に整形外科の全般に言えることだが、術後の経過を良好に保つために、手術をした部位の感染(surgical site infections、SSI)は何としても防ぐべきである。しかし、どんなに完璧な術式をもってしても、SSIを100%防止することは非常に難しいのが現状で、未知のファクターによって、「それ」は起きてしまっているのだ。つまり、これからの獣医学の発展にとって、そのファクターを突き止めることは大きなカギになっていると言えるのである。

 

そこで、Virginia-Maryland College of Veterinary Medicineは、整形外科疾患の一つ、前十字靭帯断裂(cranial cruciate ligament、CCL)を患った犬150匹以上を対象に、無症候性細菌尿(subclinical bacteriuria、SBU)の有無とSSIの発生率との関連性について検証する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆CCLに対する手術を受けた犬におけるSBUとSSIの関連性◆
・SBUは6.5%の症例に起きていた(雌に多い)
・SSIは約22%の症例に起きていた
・SBUを認める群では約33%、認めない群では約25%にSSIが起きていたものの、尿と術野から検出される細菌は異なっていた

 

上記のことから、CCLを罹患した犬において、SBUの有無とSSIの発生には関連性が無いことが窺える。よって、今後、様々なアプローチから、当該疾患の外科的治療によって生じるSSIを起こすファクターを探る研究が進められ、小動物臨床の整形外科診療レベルが更に向上していくことに期待している。

本研究に参加した症例では、外科手術に対して抗生剤療法が適応されておりますが、SBUに対しては適応されていないとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32790953/


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