ニュース

胸椎の椎間板ヘルニアに対する外科手術を受けた犬の回復と麻酔時間の関係

投稿者:武井 昭紘

代表的な犬の脊髄疾患である椎間板ヘルニアは、罹患犬の歩行能力を奪うように、痛みや知覚の消失などの神経症状を発現させることが知られている。そのため、これらの症状を改善するために外科手術が適応されるのだが、全ての症例が良好な経過を辿るとは限らず、一定の割合で、歩行能力が回復しない個体が出てしまうのが現状である。

そこで、アメリカとヨーロッパの大学らは、290匹を超える胸腰部の椎間板ヘルニアを発症した犬(痛覚が欠如している症例)を対象にして、「手術から1年以内に歩行可能となる否か」という予後と、麻酔・手術時間との関連性を調べる研究を行った。すると、歩行可能となったグループの麻酔時間は、回復しなかったグループのそれと比べて、有意に短かったとのことである。

上記のことから、外科手術に臨む椎間板ヘルニアの犬の経過を良好に保つためには、麻酔時間を短縮することが重要だと考えられる。よって、今後、3Dプリンタあるいはバーチャルリアリティ(VR)を活用した手術シュミレーションシステムの確立など、この「短縮」を実現するためのコツやポイントについて明らかにする研究や技術開発が進み、当該疾患に対する診療レベルが向上していくことに期待している。

歩行可能となったグループの麻酔時間は中央値4.0時間、回復しなかったグループは中央値4.5時間だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32418346


コメントする