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腎不全マーカーSDMAを膵炎症例のモニタリングに適応しようとした研究

投稿者:武井 昭紘

イタリアのピサ大学の研究によると、腎機能の低下、例えば、血清中クレアチニン濃度(CRE)の上昇急性腎障害(Acute kidney injury、AKI)の有無は、急性膵炎(acute pancreatitis、AP)を患った犬の予後を左右するとされている。つまり、犬の膵炎を診察・治療する上で、罹患個体の腎臓の機能をモニタリングすることは大変に重要なことだと言えるのだ。

 

そこで、同大学は、CREよりも高感度で腎機能の低下を評価するSDMA(symmetric dimethylarginine、対称性ジメチルアルギニン)に着目して、APの犬における当該項目の変動を観察する研究を行った。なお、本研究では、腹部エコー検査およびSNAP cPLを含む臨床検査(入院から48時間以内)にてAPと診断された犬54匹が参加しており、腎疾患の既往歴を持つ、あるいは、腎毒性を有する薬剤へに曝露された個体は除外しているという。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆APの犬におけるSDMAの変動◆
・40%以上の症例で、SDMAが15μg/dLを越えていた
・CREが正常な症例の30%以上では、SDMAが参照値を上回っていた
・AKIを併発している症例群のSDMAは、併発していない群に比べて、有意に高かった
・AKIを併発している症例群のSDMAとCREは、正の相関関係にあった

 

上記のことから、SDMAは、APに罹患している犬にAKIが起きているか否かを推察する一つの指標になり得ると考えられる。よって、今後、その推察を高精度化するための研究が進み、APとAKIが併発している症例を特定するSDMAの参照値が設定されていくことに期待している。

本研究では、症例の生死とSDMAには関連性が認められなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32492828


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