ニュース

ウェスティーの特発性肺線維症に関与しているかも知れない遺伝子の発見

投稿者:武井 昭紘

スコットランド原産の小型犬ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(West Highland White Terrier、WHWT)は、ジャパンケネルクラブ調べの登録件数ランキングにランクインする程の高い人気を誇る一方で、致死的経過を辿る呼吸器疾患、いわゆる特発性肺線維症(Canine idiopathic pulmonary fibrosis、CIPF)に罹患することが知られている。そのため、現在の獣医学では、このCIPFの予後を良好にするための治療法の開発が課題であるとされており、甲状腺ホルモン受容体作動薬ソベチロームの有用性を検証するトライアルなどが行われているのである。

そのような背景の中、イリノイ大学は、WHWTから採取した唾液サンプルを用いて、ゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study、GWAS)を実施し、遺伝子変異を検出する研究を行った。なお、同研究には、CIPFを発症した28例と発症していない44例のWHWTが参加している。すると、180万を超える一塩基多型(single nucleotide polymorphism、SNP)が発見され、第18番染色体上のcleavage and polyadenylation specific factor 7(CPSF7)およびsuccinate dehydrogenase complex assembly factor 2(SDHAF2)が、変異遺伝子の候補に挙がってきたとのことである。

上記のこととともに、人医療においてCPSF7は肺腺癌の発生に関与しており、特発性肺線維症のヒトが肺癌を患うことを考慮すると、両遺伝子(特にCPSF7)は、CIPFの病態形成にも関わっている可能性があるものと思われる。よって、今後、CPSF7に変異を有した「健康な」WHWTがCIPFを発症するか否かについて検証され、その成果が当該疾患の遺伝子治療の確立へと繋がることを期待している。

今回紹介した研究が、WHWTの繁殖プログラムにも変革を齎すことを願っております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32486318/


コメントする