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先天性感音性難聴を患うダルメシアンの特徴を調査した研究

投稿者:武井 昭紘

先天性感音性難聴(congenital sensorineural deafness、CSD)とは、内耳(蝸牛と有毛細胞)の機能異常に伴う難聴のことで、クロアチア原産の大型犬ダルメシアンが発症する感覚器の疾患である。また、このCSDは、オーナーの主訴(耳が聴こえない症状)に加えて、一般の動物病院に普及していない特殊な検査機器を用いて診断を下すため、発見自体が難しく、且つ、有効な治療法が確立されていない病気として認識されている。つまり、CSDの診療では、繁殖計画を見直して有病率を低下させることが、治療に代わる「解決策」と言えるのだ。

そこで、ノッティンガム大学は、過去27年間において、イギリス国内で聴性脳幹誘発反応(brainstem auditory evoked response、BAER)という聴覚検査を受けたダルメシアン(8900匹以上)を対象にして、CSDの有病率の変遷と表現型(虹彩の色、顔の班の有無)との関連性を明らかにする研究を行った。すると、年を経るごとに減少する有病率に合せるように、青い虹彩の個体数は減り、顔に班がある個体が増えることが明らかになったとのことである。

上記のことから、虹彩の色および顔の班の有無を遺伝的に選択しながら繁殖をすることは、未来のCSDの有病率を左右することが窺える。よって、今後、CSDに苦しむダルメシアンと、それを悩むオーナーを更に減らしていくために、現状の傾向を維持する繁殖計画が広く普及していくことを願っている。

母集団におけるCSDの有病率は、17.8%だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32543777/


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