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犬から猫へ受け渡された血液~異種間輸血療法の有用性~

投稿者:武井 昭紘

全国的な血液バンクの設立。
輸血用血液の長期保存法の確立。
自己血輸血のガイドライン化。

動物医療が克服するべき輸血療法に関する急務の課題は、現在、山のように積まれている。仮に、一つでも実現すれば小動物臨床に大きな変革を齎すのだが、しかし、なかなか思うように進展しないのが現状のようである。つまり、絶対的な輸血用血液の不足は、解決しないままなのだ。そこで、多種多様な動物を診療対象とする動物医療ならではの発想として、異種間における輸血療法が試みられることがある。だが、「異種間」という性質上、輸血副反応という障壁が立ちはだかることは想像に難くないだろう—–。

 

そのような背景の中、イギリスの大学らは、過去2年6ヶ月の間に異種間輸血療法(犬の血液を輸血)を受けた貧血の猫49匹を対象にして、彼らの経過・予後を追跡する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆異種間輸血療法を受けた猫の経過と予後◆
・貧血の主な原因は、外科手術に伴う失血、免疫介在性貧血、腫瘍である
・輸血前のPCV(中央値10%)は、輸血12時間後に改善した(中央値25%)
・10匹の猫が輸血後24時間以内に亡くなっている(安楽死を含む)
・輸血後、約2日で半数の猫に溶血性の副反応が認められた
・約30%の猫が、輸血後、平均173日生存した

 

上記のことから、一部の症例に限るが、貧血の猫に犬の血液を輸血することができるものと考えられる。よって、今後、異種間輸血で生存できる個体を判別する方法が考案されるとともに、輸血療法の決断に迫られるも猫の血液が入手できない状況を想定し、貧血の猫に対する異種間輸血療法がガイドライン化されていくことに期待している。

研究に参加した49匹の猫のうち、発熱を呈した割合は、約12%だったとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31867733


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