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一つのサンプルで猫のCBCと生化学検査を実施するための基礎研究

投稿者:武井 昭紘

読者の皆様、特に新人の獣医師に訊く。

猫の診察をしていて、検査に必要な血液サンプルを採取するのに苦慮したケースを経験した先生はおられるだろうか。また、採取した血液の量が、生学検査に用いるEDTAチューブと血球計算に用いるヘパリンチューブに分注できる程に充分でなく、『どうしよう、もう一度採血するか・・・』と悩んだ先生はおられるだろうか。

本稿では、そのような先生方に向けて、アメリカの大学らが発表した、ある研究を紹介したい。

 

なお、大学らによると、臨床上健康な猫20匹から血液を採取し、1匹ごとに以下に示す4つのサンプルを用意して、CBC(3回測定)および血液塗抹(3枚作製)による血球検査を実施したとのことである。

①EDTAチューブに入れた1.3mLの血液
②EDTAチューブに入れた0.5mLの血液
③ヘパリンチューブとEDTAチューブの両方に通した1.3mLの血液
④ヘパリンチューブとEDTAチューブの両方に通した0.5mLの血液

すると、ヘパリンが添加された③④を含めて、全てのサンプルにて、好中球数、赤血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度などの項目(血小板数を除く)に相違は認められなかったという。

 

上記のことから、血液サンプルに加わったヘパリンは、赤血球系の検査項目の結果に影響を与えないことが窺える。よって、万が一、猫から採取した血液が少なく、EDTAチューブとヘパリンチューブに分注が難しい場合に遭遇した際には、一度ヘパリンチューブにサンプル全てを入れて、血球計算に必要な血液量をEDTAチューブに移しかえる操作を行ってみると良いかも知れない。

病気を抱える猫に関しては、更なる検証が必要とのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32478634


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