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トリロスタンの投与量の適正を評価する指標の開発を試みた研究

投稿者:武井 昭紘

犬の副腎皮質機能亢進症は、腎臓の近くに位置する副腎から過剰にコルチゾールが分泌される疾患で、罹患個体に多飲多尿、多食、皮膚トラブル、筋力の低下、糖尿病、血栓症などの症状を齎すことが知られている。故に、当該疾患では、コルチゾールの分泌を抑える治療薬、例えば、トリロスタンを投与することが一つの選択肢となっている。しかし、このトリロスタンの薬用量には一定の幅があり、治療を開始する時点にて、各症例に合った投与量を「客観的に」判定することが難しいのが現状である。

そこで、アメリカとスペインの大学らは、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(pituitary-dependent hyperadrenocorticism、PDH)の犬に協力を仰ぎ、トリロスタンの適切な投与量を判定する方法を確立する研究を行った。なお、同研究では、オーナーの印象に基づいて、臨床症状が改善した個体の投与量を適正量(adequate dose、A)、臨床症状が残る個体の投与量を過少量(underdosed、U)としてグループ化して、両群におけるモニタリング項目(文献をご参照下さい)が比較されている。すると、残念ながら、測定された項目では、両群を判別することはできなかったとのことである。

今回紹介した研究は、AとUを判別するに至らなかったが、これらを見極める手法を考案することは、犬の副腎皮質機能亢進症に対する診療レベルを高めるために一役買うものと思われる。よって、今後、両群間に有意差が認められるモニタリング項目が発見されていくことに期待している。

食欲不振や嘔吐を呈した個体の投与量は、過剰量(overdosed、O)とされ、研究対象から外したとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32533623/


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