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アメリカで増加する犬のフィラリア症に対するワクチンを開発する研究

投稿者:武井 昭紘

フィラリア(Dirofilaria immitis)は、犬の循環器に寄生する病原体で、アメリカにおいて毎年100万匹の犬が感染していると言われている。また、その勢いは留まることを知らず、2016年以降、動物病院を訪れるフィラリア症の犬の数は、20%以上増加しているという。そして、その背景には、薬剤耐性を獲得したフィラリアの存在があるとされている。つまり、既存の薬剤によるフィラリア予防は、ガタガタと音を立てるが如く、崩壊しつつあるのだ。

そこで、アメリカはコロラド州に拠点を構える研究支援組織、モーリス動物財団(Morris Animal Foundation、MFA)は、イギリスのリバプール大学に資金提供をして、D. immitisに対するワクチンを開発する研究を進めている。なお、同研究では、既に、D. immitisとは異なる線虫類が生成する、①犬の免疫機能で認識されないようにするタンパク質および②T細胞の攻撃を防ぐタンパク質を特定しているとのことで、これらを基に、D. immitisが生成するかも知れない①や②に対するワクチンを作製することを目的としている。

 

犬がD. immitisに感染すると、血管系の炎症を伴って心不全、肺血栓症を発症し、最終的には、多臓器不全(腎不全、肝不全)に陥って致死的経過を辿る。果たして、アメリカでフィラリアに感染する犬のうち、どれ程の症例が、このような転帰を経験するのか。現在開発中のワクチンが、苦しみながら亡くなっていく犬たちの命を救う治療法として確立されることを願うばかりである。

開発されたフィラリア症予防ワクチンが、日本でも普及していくことに期待します。

 

参考ページ:

https://www.morrisanimalfoundation.org/article/drug-resistance-grows-researchers-plow-new-ground-develop-heartworm-vaccine


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