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甲状腺機能亢進症の猫に起きるとされる細菌尿のリスクファクターに関する研究

投稿者:武井 昭紘

獣医師個々人の知識や経験によって意見は分かれるのかも知れないが、甲状腺機能亢進症の猫には、明らかな臨床症状を伴わない尿路感染症(urinary tract infection、UTI)のリスクが付き纏うとされており、実際、罹患猫の12~22%においてUTIが起きているという報告も上がっている。故に、当該疾患を抱える猫の診察では、尿検査、特に尿サンプルの培養試験を推奨する先生方もおられるようである。

そのような背景の中、コーネル大学および動物検査会社アイデックスラボラトリーズらは、300匹状の甲状腺機能亢進症の猫におけるUTIの有病率を算出する研究を行った。すると、罹患猫の有病率は、甲状腺疾患の無い猫のそれと比べて有意差は認められず、性別(メス)のみがリスクファクターであったとのことである。

上記のことから、冒頭に記した「推奨」には、臨床的な意義は無いと結論付けられる。よって、尿を採取する手間やストレス、尿検査に要する時間や費用を考慮すると、甲状腺機能亢進症の猫の経過観察にて、UTIを過剰に警戒する(オーナーの不安を煽る)必要は無いと言えるのではないだろうか。

同研究では、臨床症状を伴ったUTIを発症した猫は除外されているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32277782


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