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尿サンプルの細菌培養が陽性になることを予測できるバイオマーカー

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床で良く遭遇する尿路感染症(urinary tract infections、UTI)の主な原因の一つに、細菌が挙げられる。そのため、泌尿器科の診療では、尿サンプルの培養および薬剤感受性試験の実施によって、細菌に対して有効な抗生剤の選択と適正使用が重要となる。だが、これらの試験を進めるには一定の時間を要するのが現状で、その結果が出るまでは、抗生剤の経験的な使用が求められることが通例である。しかし、細菌性のUTIを疑った症例の尿サンプルの試験が陰性となれば、経験的に使用していた抗生剤は、耐性菌を出現させる「乱用」になり兼ねないのだ。

そこで、テネシー大学は、培養試験が結果を類推できるバイオマーカーとして、尿中ミエロペルオキシダーゼ(urine myeloperoxidase、uMPO)の有用性を検証する研究を行った。なお、同研究では、酵素免疫測定法(ELISA)により、90匹を超える犬のuMPOの検出が試みられており、培養試験が陰性となった例と比べて、陽性例の尿には有意に高い濃度のuMPOが含まれていることが判明したとのことである。

上記のことから、uMPOは、培養試験が陽性になる尿を判別するマーカーになり得ることが考えられる。よって、今後、前述したELISA法の感度と特異度(本研究では、それぞれ70%、69%)を向上する追加研究が計画され、uMPOが、培養試験が陰性になる症例を判別し、抗生剤の乱用および耐性菌の出現を防ぐマーカーとして確立されていくことに期待している。

培養試験の結果を予測する、このELISA法がキット化されると、泌尿器科の診療における抗生剤の乱用が大幅に減るかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32442236


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