フォンウィルブランド病(von Willebrand’s disease、vWD)。
これは、損傷した血管と血小板を繋げる橋渡しをして出血を止め、「一次止血」を担うフォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand factor、VWF)の質的あるいは量的な異常をきたす遺伝性疾患である。日本国内では、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのそれが、診療現場で比較的よく遭遇する例かも知れない。また、その他の好発犬種としては、ドーベルマン・ピンシャー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、スコティッシュ・テリア、シェットランド・シープドッグなどが挙げられる。
そして、パピオンだ。
この度、イギリスケネルクラブは、このパピオンが発症するvWD type 1(vWD1、VWFの量が減少するタイプ)に対する遺伝子検査を承認した。目的は、繁殖計画を見直し、当該疾患に苦しむパピオンを減らすためだ。
vWD1に罹患した個体は、紫斑、鼻や歯肉からの出血を呈することがあるが、日常生活の中では無症状の場合も多い。しかし、外科手術、出産などをキッカケに、その出血が止められず、致死的経過を辿ってしまうことがある。病気を克服するための手術、新たな命の誕生に付き纏う、この「死の影」は、オーナーにとって悲劇でしかない。よって、今回紹介したイギリスケネルクラブによる遺伝子検査の承認が、1匹でも多くのパピオンを救い、絶望に打ちひしがれるオーナを1人でも減らすが如く機能していくことを切に願っている。
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