一次診療施設で実施される血液生化学検査の項目の一つである血清総カルシウム濃度(Ca)は、アルブミンに結合しているカルシウムと、結合せずに生理活性を有するイオン化しているカルシウムの2つで構成されており、血清中アルブミン濃度(ALB)に応じて両者のバランスが保たれていることが知られている。故に、Caを測定して高カルシウム血症・低カルシウム血症の判定をする際には、CaおよびALBの数値と補正式を用いて、慎重に評価を行う必要があるのだ。
そのような背景の中、エジンバラ大学は、イオン化カルシウム濃度が高い症例を対象にしてCaを測定し、350匹を超えるの臨床上健康な犬のCaから設定した参照値と比較する研究を実施した。すると、約36%の症例のCaが参照値範囲内に収まっており、この症例群の70%で低アルブミン血症が認められなかったとのことである。
上記のことから、CaとALBが明らかな異常所見を示さない個体でも、イオン化カルシウム濃度が高い、つまり、高カルシウム血症に陥っているケースがあり得ることが窺える。よって、主訴と臨床検査所見を総合した作成した鑑別リストに高カルシウム血症が挙がった場合には、CaとALBに加えて血清中のイオン化カルシウム濃度を測定することが望ましいと思われる。
参考ページ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32043601