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緑内障の犬の涙に含まれるバイオマーカー候補の成分を特定する研究

投稿者:武井 昭紘

眼の中の圧力(眼圧)が進行性に上昇していく緑内障は、その圧力の高まりに伴って疼痛や視力障害を起こすことから救急疾患にも挙げられる病気であり、早期発見・早期治療が望ましいとされている。しかし、この緑内障の治療方針を決定する上で重要な隅角検査は、眼科診療に慣れていない獣医師にとって非常に大きなハードルのようで、彼らに眼科診療に対する苦手意識を与えてしまう原因の一つになっているのが現状である。

そのようは背景の中、オーストラリアの大学らは、①原発閉塞隅角緑内障(primary angle closure glaucoma、PACG)あるいは②原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma、POAG)を罹患した犬を対象にして、彼らの涙に含まれるタンパク質を同定する研究を行った。すると、臨床上健康な個体の涙と比べて、①に特有の7種類、②に特有の14種類のタンパク質が同定されるとともに、①のうち、治療歴のある個体の涙からレチノール結合タンパク質およびNSFL1 cofactor p47が、治療歴の無い個体の涙からヌクレオシド二リン酸が検出されることが明らかになったとのことである。

上記のことから、今回紹介した研究で確認された「特有の」タンパク質は、それぞれの病態や治療歴の有無を表すバイオマーカーになり得るものと考えられる。よって、小動物臨床(特に一次診療施設)における眼科診療のレベルを向上させるために、今後、これらのバイオマーカーが商業化されることに期待している。

涙サンプルは、シルマー試験紙を用いて採取されたとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32364655


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