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犬の腎不全に対する尿中バイオマーカーを新たに発見するための研究

投稿者:武井 昭紘

慢性腎不全(Chronic kidney disease、CKD)は、小動物臨床で良く遭遇する一般的な犬猫の泌尿器疾患として知られているおり、且つ、進行性である特徴から、早期発見・早期治療が望ましいとされている。しかし、現在、一次診療でCKDを早期発見をするために利用できるバイオマーカーは、IDEXX社のSDMAなど、数えられる程に限られているのが現状である。

そこで、ヨーロッパの大学らは、①臨床上健康な犬と②CKDの犬から採取した尿サンプルを用いて、プロテオソームおよびメタボローム解析を行った。すると、①と②の尿では、17種類の代謝産物の濃度に有意差が認められ、中でも、カルノシン、トリゴネリン、アコニット酸(cis型)という物質が、有用なバイオマーカーとなる可能性を秘めていることが明らかになったとのことである。

上記のことから、CKDを診断するための新たなバイオマーカーの開発は、いまだ、発展途上にある「期待の」研究分野であると言える。よって、今回紹介した研究が基になり、SDMAでは認識できない極初期のCKDを発見できるバイオマーカーが誕生し、獣医療のレベルが一段と上がっていくことを願っている。

①に比べて、②の尿では、ウロモジュリンの濃度が有意に上昇していることも分かっており、この物質もバイオマーカー候補になるとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32335294


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