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外科手術を受けたイスリノーマの犬における糖尿病の有病率と予後悪化因子に関する研究

投稿者:武井 昭紘

犬の血糖値をコントロールする主要臓器の一つ、膵臓に発生する悪性腫瘍をインスリノーマと呼ぶ。この腫瘍の最大の特徴は、インスリンを過剰に分泌することで、生命維持が困難になるほどの重度の低血糖と、それに伴う発作を罹患犬に齎すことである。故に、患部(膵臓)を外科的に切除することが治療法となる。しかし、術後に膵臓からのインスリンの分泌が不足し、低血糖から反転して高血糖、つまりは、糖尿病を発症するリスクが生じてしまうことが、大きなジレンマとして立ちはだかっていることが現状なのだ。

 

前述のような背景の中、リバプール大学らは、術後における糖尿病の有病率、および、その発症リスクを予測する因子を解明するために、外科手術を適応して病理組織学的に診断が下されたインスリノーマの犬48匹の転帰を追跡する研究を行った。すると、以下に示す事項が明らかになったとのことである。

◆手術を受けたインスリノーマの犬の転帰◆
・約30%の症例が高血糖を呈した
・約20%(高血糖を呈した症例の約56%)の症例が糖尿病に陥った
・発症リスクを予測する因子は特定できなかった

 

上記のことから、誠に残念ながら予測因子の特定には至らなかったものの、術後に高血糖を呈する犬の半数以上が糖尿病に移行することが分かる。よって、今後、糖尿病の発症を予測できる因子を突き止めるために、症例数を増やした大規模な研究が計画され、その発症を予防する術式や治療法が開発されていくことに期待している。

本研究では、症例が生存する期間の中央値が372日(最長で1680日)だということも判明しているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32212400


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