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血管肉腫を罹患した犬におけるバルトネラ属菌の感染率を調査した研究

投稿者:武井 昭紘

血管肉腫(Hemangiosarcoma、HSA)は、犬の心臓・脾臓に発生する腫瘍の3分の2を占め、年間10万匹以上の罹患犬が死の転帰を辿る一般的な腫瘍性疾患で、周囲組織に浸潤するとともに、転移を起こし、無治療での生存期間は僅か50日とも言われる病気である。一方、話が変わるが、バルトネラ属の細菌は、ヒトや動物に感染すると、血管増殖性病変(腫瘍性、非腫瘍性)の形成に寄与するとの報告が上がっている。つまり、前述した2つの事実を総合すると、HSAの発生と同属の細菌による感染症との間には、何らかの因果関係が横たわっている可能性があると推察でき、感染症コントロールがHSAの病態進行を防ぐかも知れないと仮説を立てることができるのだ。

そこで、ノースカロライナ州立大学は、病理組織学的にHSAと診断された100匹以上の犬を対象に、腫瘍組織(心臓、脾臓、皮膚など)または血液からサンプルを採取し、PCR法を用いてバルトネラ属の遺伝子を増幅して、その有無を確認する研究を行った。すると、約7割の症例の腫瘍組織から当該遺伝子が検出され、血液サンプルからは遺伝子が増幅されないことが判明したとのことである。

上記のことから、冒頭に記した「可能性」が示されたものと考えられる。よって、今後、バルトネラ属菌が検出されたHSA症例と、検出されない症例のステージ分類、治療経過、生存期間などを比較する研究が実施され、小動物臨床が、犬のHSAをより詳しく深く理解するためのヒントを掴むことを期待している。

本研究では、非腫瘍性血管増殖病変の約6割からもバルトネラ属の遺伝子が検出されているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31923195


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