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猫の変形性関節症を発見するためのチェックリストの開発とその精度を高める重要なポイント

投稿者:武井 昭紘

外傷や肥満(関節への負担の増加)など原因として起きる変形性関節症(degenerative joint disease、DJD)は、中齢から高齢の猫が発症する一般的な病気であり、罹患猫に、疼痛(触られることを嫌がる)や日常的な動作が困難になるといった症状を齎すことが知られている。しかし、全てのオーナーが、愛猫が抱えているかも知れない前述のような病的現象に気が付くことは非常に難しいというのが現状で、動物福祉および小動物臨床の診療レベルの向上には、彼らに「猫の異変」を認識してもらう何らかの施策の考案が欠かせないことであると言える。

そこで、ノースカロライナ州立大学は、猫のDJDに関する過去の報告を解析することで当該疾患の有無を判定する質問形式のチェックリストを開発し、その精度を猫のオーナーに協力を仰いで検証する研究を行った。すると、このチェックリストは、DJDという病気を知っているヒトに限定した精度(感度99%、特異度100%)は大変に高いものの、DJDを知らないヒトにおける精度(感度55%、特異度97%)は大きく低下してしまうことが明らかになったとのことである。

上記のことから、獣医師がオーナーに猫のDJDについて説明した後であれば、今回開発されたチェックリストは有用なツールになり得ることが窺える。つまり、裏を返せば、DJDの早期発見・早期診断には、当該疾患に関する積極的な啓蒙が重要であることが示唆されたものと考えられる。よって、是非とも、DJDを疑う症例の診察を担当する獣医師は、そのオーナーの意識を高め、猫たちの感じる違和感や痛みを緩和するために、充分なインフォームド・コンセントを実施して頂きたいと思う。

今後、DJDを判定するチェックリストの精度を上げるインフォームド・コンセントの内容についてもリスト化されることを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32122226


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