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Feline Grimace Scale~猫の表情から感じている痛みを類推するペインスケール~

投稿者:武井 昭紘

『今、目の前に居るこの子は、痛みを感じているのだろうか?』

入院室に設置されたケージの隅に佇む猫を観ながら、このような疑問を抱いた獣医師(特に新人獣医師)は少なくないものと推察する。勿論、ケージから猫を出して、触り、反応をみれば、ある程度把握できると回答する先生方もおられると思うが、相手は猫である。素直に触らせてくれるかは、個体の性格に大きく左右されることは言うまでもないだろう。

ならば、他に方法はないのだろうか?
ここに焦点を当てた研究が、カナダの大学らによって発表された。

 

なお、同大学らによると、70匹の猫(20匹のコントロールを含む)の疼痛スコアを既存のスケールで評価するとともに、彼らの表情をビデオ撮影し、その変化をデータ化したところ、マズル(鼻の下から上唇の間)の幅と高さ、そして、両耳介の動きが疼痛と深く関連していることが明らかになったとのことである。具体的には、マズルの高さが低下し、幅が増え、耳介が倒れた時に、強く痛みを感じているというのだ。

 

これは、「Feline Grimace Scale」、敢えて日本語に訳すと、猫の顔のゆがみスケール(猫のしかめっ面スケール)と名付けられた。

扉を開けることなく、ましてや触ることもなく、ケージ越しに猫の表情を頼りにして痛みを評価する手法である。つまり、獣医師にとっても、猫にとっても、不必要なストレスを与え与えられなくて済む手法と言えるのではないだろうか。よって、両者の関係性を良好に保つために、今後、Feline Grimace Scaleが一次診療を担う動物病院へと普及するとともに、このスケールを基に猫の疼痛を訴える表情を数値化するアプリが開発されることに期待している。

どのような猫の表情が痛みを感じていると言えるのかについて、画像を確認されたい先生方は、Feline Grimace Scaleの概要をご覧頂けますと幸いです。

 

参考文献:https://www.nature.com/articles/s41598-019-55693-8

Feline Grimace Scaleの概要:https://www.avma.org/javma-news/2020-04-01/pain-points


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