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突発性後天性網膜変性症候群の犬に起きている免疫学的現象について調べた研究

投稿者:武井 昭紘

突発性後天性網膜変性症候群(sudden acquired retinal degeneration syndrome、SARDS)は、文字通り、突然にして犬の視力が奪われてしまう眼科疾患であり、9歳齢前後の個体、不妊メス、ダックスフンドが発症しやすい病気として知られている。また、当該疾患は、罹患犬が持つ免疫機能に何らかの異常が起きて、網膜における情報伝達に支障をきたすことが原因となっているのではないかと言われている。しかし、その病態の詳細は未だ解明されておらず、多くの「謎」が残されているのが現状である。

そこで、ノースカロライナ州立大学は、①SARDSの犬と②臨床上健康な犬(罹患犬と年齢・品種を合わせた個体群)を対象にして、血清中に存在する網膜に対する抗体の測定と、その抗体を用いた犬の網膜組織の免疫染色を観察する研究を行った。すると、②に比べて①では、血清中IgG濃度が有意に低く、血清中IgM濃度が有意に高いとともに、これらのIgGは外節(光受容体)に、IgMは網膜全体に結合することが判明したとのことである。

果たして、今回紹介した研究から得られた結果は、何を意味しているのか。今後の研究が更に進展し、網膜に結合する抗体が有しているかも知れない病原性について、明らかにされていくことに期待している。

IgGやIgMが網膜に結合することを阻害する治療法が、SARDSの発症を予防し、あるいは、症状を軽減する効果を発揮するか否かについて検証されていくと、新しい見解が生れるのではないでしょうか。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32126218


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