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犬の副腎皮質機能低下症をアルゴリズムで理解するデジタル獣医学

投稿者:武井 昭紘

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病、Canine hypoadrenocorticism、CHA)は、感染、外傷、腫瘍、自己免疫疾患、手術、特定の薬剤の投与歴などを原因として発症する病気で、副腎皮質から分泌されるホルモンの不足に伴う急性経過によって、罹患個体が1000匹に3匹の割合で瀕死の状態に陥る内分泌疾患である。しかし、当該疾患に伴う臨床症状は、消化器症状、神経症状、泌尿器症状を主体として形成されるが故に、忙しい臨床現場で、且つ、無数にある「犬の病気」からCHAを疑うことが常に徹底されることは、第三者が思う程に簡単ではないことが現状となっている。

そのような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、AdaBoostという機械学習システムを用いて、適切な治療無しでは致死的経過を辿ることもあるCHAを高い精度で診断するアルゴリズムを明らかにする研究を行った。なお、アルゴリズムとは、ある問題(本稿では「CHAであるか否か」)に回答を導き出すフローチャートのデジタル版とイメージして頂きたい。そして、同大学らによると、研究の結果、感度・特異度ともに96%を超える精度のアルゴリズムが完成したとのことである。

上記のことから、このアルゴリズムを基にすれば、一次診療にて疑うこと自体が難しいとも言えるCHAを確実に診断できるシステムを、一般の動物病院にサービスとして提供できるものと予想される。よって、今回紹介したアルゴリズムが症例数を更に増やて精度をより一層高めつつ、1日でも早く世界中へと普及していくことを願っている。

この研究には、健康な犬900匹以上、CHAの犬130匹以上が参加しているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0739724019300748


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