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胆汁うっ滞性肝疾患を罹患した猫における血清中ビタミンD濃度を測定した研究

投稿者:武井 昭紘

ビタミンD(VD)は、生体内のカルシウムの代謝に深く関与している栄養素の一つとして広く一般にも知られているとともに、獣医療における入院症例の予後判定乳腺腫瘍の悪性度分類腫瘍随伴症候群(高Ca血症)の発症メカニズムの解明などに有用な因子として認識され始めた物質である。また、一方で、VDは、胆汁うっ滞性肝疾患(chronic cholestatic liver disease、CLD)を患うヒトで欠乏しているとされているのだが、CLDの猫とVDの関連性については解明されておらず、未だ不明のままである。

そこで、タフツ大学は、①TBILおよびALTの上昇を呈するCLDの猫と②肝臓・胆道以外に疾患を抱える猫を対象して、血清中のVD(25 [OH] D)濃度を測定する研究を行った。すると、基準値下限を下回る血清中25 [OH] D濃度を認める症例が、①では33%、②では17%の割合で存在していることが明らかとなったとのことである。

上記のことから、CLDを罹患した猫では、25 [OH] Dが欠乏する病態を伴う症例が多いことが窺える。よって、今後、更なる研究にて、血清中25 [OH] D濃度とCLDの発症リスクの変動が統計学的に詳細に解析され、当該疾患の診断法・治療法が改良されていくことに期待したい。

今回紹介した研究では、①②と別に、肝リピドーシスの猫における血清中25 [OH] D濃度も測定されており、基準値下限を下回る症例の割合が、①②よりも多かったとのことです。

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31916866


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