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犬のフィラリア予防を新たなステージへと誘う斬新な「蚊」の研究

投稿者:武井 昭紘

国家試験に合格するための勉強に日々勤しむ学部生を含めて、獣医学に関わる殆ど人間が常識のようにご存知のことと察するが、犬猫が罹患するフィラリア症の予防は、彼らの体内に入った寄生虫の幼体を専用の薬剤で駆除することが一般的である。しかし、近年、この「段階」の駆除方法では遅いという概念が生まれ、フィラリアの幼虫が動物たちの体に入る前、つまり、蚊の中に居る段階で、蚊の吸血行動を抑止し、あるいは、虫体を駆除することが望ましいと言われるようになってきた。故に、以前、本サイトでは、蚊に刺されにくくする犬用の予防薬や、「蚊に刺されないこと」のフィラリア予防効果について紹介させて頂いたのである。

そのような背景の中、ペンシルバニア大学は、同校ホームページを介して、斬新な切り口と表現するべきか、新しい見解のもとに犬のフィラリア予防を実現する研究の一端を発表した。なお、それは、フィラリア(Dirofilaria immitis)を媒介する蚊が持つ免疫機能を活性化することによってミクロフィラリアが感染子虫に成長することを妨げるというもので、一部のネッタイシマカが線虫類の感染に対して耐性を持っているという事実の発見をキッカケにして、辿り着いた境地だとのことである。。

上記のことから、実験レベルではなく、世界中至る所に発生している蚊の免疫機能を活性化する手法が確立されれば、フィラリアの撲滅も夢ではないと言えるのではないだろうか。よって、今回紹介した研究が成功を収めることとともに、その手法に関する研究が進められることを期待している。

本研究は、Dirofilaria immitis以外に、ヒトに感染してリンパ系糸状虫症を起こすBrugia malayi(マレー糸状虫)でも行われているとのことです。

 

参考ページ:

https://www.vet.upenn.edu/about/press-room/press-releases/article/a-roadblock-for-disease-causing-parasites


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