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原因不明の脳脊髄炎を抱える犬における「てんかん発作」の有病率を算出した研究

投稿者:武井 昭紘

感染、腫瘍、自己免疫など様々な原因によって起きる犬の髄膜脳炎の一部は、現在の獣医療では原因が特定できない病態を形成している場合があり、原因不明の髄膜脳炎、英語で記すと、meningoencephalitis of unknown origin(MUO)と呼ばれてる。また、このMUOに罹患した犬の生存期間は、発作(脳炎後てんかん、postencephalitic epilepsy、PEE)の有無と深く関与していると言われており、原因の治療を検討するとともに、PEEのコントロールが重要とされている。しかし、犬のMUOにおけるPEEの有病率とリスクファクターについてのデータは乏しいのが現状である。

そこで、ヨーロッパの大学ら(グラスゴー大学、ワルシャワ大学)は、MUOを疑われている犬60匹以上を対象に、症状、発作の有無、検査所見(画像診断を含む)に纏わるデータを集積して、統計学的な解析を行った。すると、①急性疾患に伴う発作(acute symptomatic seizure、ASS)を呈した個体、②海馬に病変が存在している個体において、有意にPEEが起こりやすくなることが明らかになったとのことである。

上記のことから、①および②に該当する症例は、てんかん発作の発症に充分に注意を払う必要があるものと考えられる。よって、獣医師は、MUOの犬のうち、①または②の条件を満たす個体を飼育する家庭に対して、てんかん発作の兆候と対処方法について充分に説明をすることが望ましいと思われる。

PEEを起こした症例の年齢は、中央値3歳齢で、若い個体が多いとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31990104


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