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中枢神経系にリンパ腫を発症した猫に起きた世界初の腫瘍随伴症候群

投稿者:武井 昭紘

中枢神経に何らかの腫瘍が発生したり、免疫系疾患を患ったヒトには、脊髄小脳変性症という病態(腫瘍随伴症候群の一つでもある)が伴う場合があり、「ふらつき」や物を掴もうとして失敗する等の運動失調が認められることが知られている。しかし、一方で、犬猫における腫瘍随伴症候群としての脊髄小脳変性症に関する情報は乏しいのが現状である。

そのような背景の中、南米チリの獣医科大学らは、小脳に腫瘍を発症した猫に起きた世界初の腫瘍随伴症候群を報告した。なお、同大学らによると、運動失調、眼振、振戦、膝蓋腱反射の亢進などの神経症状を呈した猫を診察したところ、猫白血病ウイルス(Feline Leukemia Virus、C)陽性で、神経学的検査にて大脳・小脳の障害が疑われ、頭部CT検査にて小脳に腫瘤を確認したとのことである。また、脳の病理学検査(剖検)では、顕著にプルキンエ細胞(小脳を構成する細胞)が消失し、CD20陽性(B細胞を示す)のリンパ系腫瘍細胞が浸潤している像が観察されてという。

上記のことから、大学らは、この症例はリンパ腫(あるいはFeLV感染)に起因した小脳皮質変性症(cerebellar cortical degeneration、CCD)に罹患していたと結論付けた。よって、今後、今回紹介した世界初のケースを基にして、中枢神経系に腫瘍を抱えている犬猫における小脳疾患の有病率についての調査が進められていくことに期待している。

本症例は、8ヶ月齢の雄だったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31998618


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