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猫の口腔内扁平上皮癌とパピローマウイルスとの関係性について解析した遺伝子学的研究

投稿者:武井 昭紘

猫の口腔内に発生する扁平上皮癌(Feline oral squamous cell carcinomas、FOSCC)は、腫瘍性疾患全体の約10%、口腔内に発生する腫瘍に限定すれば全体の60%を占める極々一般的な病気で、治療をしても2~6ヶ月の生存期間しか期待ができない腫瘍性疾患として知られている。また、FOSCC症例の一部は、ヒトの頭頚部に発生する扁平上皮癌(human head and neck squamous cell carcinoma、HNSCC)と同様に、パピローマウイルスが罹患個体に感染することが発症要因の一つになっていると言われることもあるという。つまり、発展的にこれらの事象を捉えると、様々なアプローチからFOSCCとHNSCCを比較することは、今後の人医療および獣医療を発展させる研究分野だと考えることができるのではないだろうか。

そのような背景の中、アメリカの大学らは、FOSCC症例におけるパピローマウイルスの感染実態を把握する研究を行った。なお、同研究では、脊椎動物に感染する既知のウイルス全てを検出できる特殊なシーケンシングViroCapを用いて、①FOSCCに罹患した猫、②臨床上健康な猫、③パピローマウイルスに感染した猫の3グループから得られたサンプルを遺伝子学的に解析しており、結果、FOSCC症例のうち1例のみでネコパピローマウイルスの感染が確認されたものの、FOSCCの発症と当該ウイルスの感染に明らかな関連性は存在していなかったとのことである。

上記のことから、HNSCCとは異なり、FOSCCは、ウイルス感染を発症要因としていないことが窺える。よって、今後も、両者を比較する研究が進められ、FOSCCが発生する背景が一つひとつ丁寧に解明されていくことに期待している。

大学らは、ヒトパピローマウイルス陰性のHNSCCの病態とFOSCCのそれが類似しているのではないかと考えているとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31902496


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