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獣医学部生の「動物福祉への意識・関心」を高めるキッカケを作ったあるイベント

投稿者:武井 昭紘

音恐怖症に始まり、畜産農家・保護施設・一般家庭における飼育環境、動物病院での疼痛緩和・入院管理を経て、ネグレクト(飼育放棄)、多頭飼育崩壊、オピオイドクライシス、殺処分(感染症によるものを含む)に至るまで。苦痛やストレスを軽減し、ペットたちに穏やかで、且つ、幸せな生活を送ってもらうための「動物福祉上の課題」は、本稿では書き切れない程の膨大で、今も未解決のまま現代社会に横たわっているものが非常に多い。そのため、これらの課題に取り組む獣医師や動物看護師が増えていくことは、世界的に、常に望まれていることなのだが、現在これらの資格を保有している者だけで「賄おう」とすると、1日が24時間しかない時の流れでは全く補えないという厳しい現状がある。

そのような背景の中、アメリカ獣医師会(American Veterinary Medical Association、AVMA)は、2019年11月下旬に主催したthe annual Animal Welfare Assessment Contest(AWJAC)を通して、冒頭に記した現状を打破する一つの対策を提唱した。なお、それによると、動物福祉を向上するための施策を評価するAWJACに参加した獣医学部生100名以上を対象にオンライン調査を実施したところ、動物福祉に関心を持ち、自分自身の進路(キャリア)の選択肢に、動物福祉学に纏わる職業を入れる学生が増加していることが確認されたとのことである。

上記のことから、獣医学部生に動物福祉を考える機会を与えることは、未来の動物福祉学を大きく発展させる原動力になり得ると思われる。よって、動物たち(ペット、大動物)の立場になって熟慮し行動できる獣医師・動物看護師を育てるために、日本全国の教育機関でもAWJACのようなイベントが定期的に開催される続けることを願っている。

AWJACを経験した学生が、動物福祉を理解した「ウェルフェアフレンドリー」な獣医師になっていくことを期待しております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31910087


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