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犬における尿石症と尿中に排出されるカルシウムの濃度との関連性を調べた研究

投稿者:武井 昭紘

ある統計学解析によると、ゴールデン・レトリバー、ダックスフンド、パグ、柴などと比較して、ミニチュア・シュナウザーは、ストルバイトよりもシュウ酸カルシウム(calcium oxalate、CaOx)による尿石症を罹患しやすい品種であるとされている。つまり、この事実を発展的に見つめると、様々なアプローチから、ミニチュア・シュナウザーにおけるCaの代謝を詳細に解析することは、「ミニチュア・シュナウザー=CaOx」というリンクに秘められた謎や発症メカニズムを明らかにする良い機会となるのではないかと考えることができるのである。そこで、本稿では、アメリカの首都ワシントンD.C.に隣接するヴァージニア州に位置するVirginia-Maryland College of Veterinary Medicineという大学の研究を紹介したいと思う。

なお、同大学によると、①CaOx尿石症を患った、および、②臨床上健康なミニチュア・シュナウザーを対象にして、尿中に排泄されるCaとクレアチニンの比(urine calcium to creatinine ratio、UCa/Cr)を測定したところ、②よりも①において、食餌のタイミングに影響されることはなく、UCa/Crが有意に高値を示すことが判明したという。そして、これを受け、Virginia-Maryland College of Veterinary Medicineは、CaOx尿石症のミニチュア・シュナウザーは尿中にCaを高濃度で排出していると結論付けたとのことである。

上記のことから、UCa/Crは、CaOxに起因した尿石症の発症リスクを把握(予測)する有用なマーカーに成り得る可能性があるものと考えられる。よって、今後、UCa/Crの感度(56%)を向上させるための追加研究が実施さるとともに、犬のUCa/Crの参照値が設定されていくことに期待している。

CaOxによる尿石症を発症しやすい犬種、例えば、チワワ、マルチーズ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアンなどについても、今回紹介した文献と同様にUCa/Crを測定する研究が行われると、犬の尿石症を「より詳しく知る」ことが出来るのかも知れません。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31926039


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