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トリコスコープを用いた犬の毛包パラメーターの測定とその有用性

投稿者:武井 昭紘

小動物臨床で非常に良く遭遇する皮膚疾患の一つに、ある特定の部位の被毛が脱落する「脱毛」という現象があり、この脱毛が起きる一因は、毛の発育過程に障害を呈した「毛周期の乱れ」だとされている。故に、罹患個体において、その乱れの有無を確認することが皮膚科診療の重要ポイントと考えられているのだが、現在の獣医療では、非侵襲的に「乱れ」をチェックする手法が乏しく、患部を切り取って病理組織学的に検査する方法が第一に選択される現状にある。しかし、患部を切り取ることは、オーナーおよび動物にとって大きなストレスを生じるキッカケになることは否めないのだーーーーー。

そのような背景の中、イリノイ大学付属動物病院は、ヒトの毛包の状態をパラメーターにして客観的に評価するトリコスコピー(TrichoScale Pro©)を用いて、臨床上健康な犬の毛周期をデータ化する(毛包パラメーターを取得する)研究を行った。すると、供試犬の毛が伸びるスピードは平均0.065mmで、背部・胸部・腋窩における成長期と休止期にある被毛の割合は同程度になっていることが明らかになったとのことである。

上記のことから、トリコスコピーによる毛包パラメーターの測定は、犬の毛周期を観察する手法として非常に有用だと考えられる。よって、今後、健康な犬のみならず、脱毛を呈する個体、内分泌疾患を抱えた個体、去勢・不妊手術を受けた(手術後の脱毛を発症した)個体などの毛包パラメーターがデータ化され、トリコスコピーの小動物臨床応用が加速していくことに期待している。

本研究では、被毛の太さ、一次・二次毛の割合も数値に置き換えることができたとのことです。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31898370


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