ニュース

胆嚢炎を発症した胆嚢粘液嚢腫の犬の死亡率について統計学的に解析した研究

投稿者:武井 昭紘

胆嚢粘液嚢腫とは、周りを肝臓に囲まれた消化器の一つ胆嚢の内部に胆汁がうっ滞し、且つ、粘稠性を増加させていくことで形成される病態のことで、嘔吐、食欲不振、黄疸、胆嚢炎、腹膜炎などの症状を発現して、罹患犬の一部を死に至らしめることもある疾患である。故に、致死的経過を辿る胆嚢粘液嚢腫の疫学を解明していくことは大変に重要だと考えらており、今後の研究の進展に期待するところとなっている。

そのような背景の中、アメリカの獣医科大学らは、200例を超える犬の胆嚢粘液嚢腫の実例を対象にして、①胆嚢炎の有無と②死亡率の上昇(生存率の低下)との間にある関連性について統計学的な解析を行った。すると、約29%の症例において胆嚢炎が認められたものの、①と②に有意な関係は存在していないことが明らかになったとのことである。

上記のことから、胆嚢粘液嚢腫の犬が致死的経過を辿る要因は、胆嚢炎ではなく、別の要因によると考えることができる。よって、「犬の胆嚢粘液嚢腫は胆嚢炎を併発すると死亡リスクが高まる」という意見をお持ちの先生方がおられると推察するが、その裏に潜んでいる「真」の危険因子を探る研究を計画・実施することが、獣医療の発展には必要なのではないだろうか。

本研究では、約14%の症例の胆嚢から細菌が検出されておりますが、胆嚢炎の発症とは関連していなかったとのことです。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31854510


コメントする