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National Obesity Awareness Week~ヒトとペットの肥満を見つめ直す1月の啓蒙週間~

投稿者:武井 昭紘

肥満は病気である

 

2013年、米国医師会にて前述のように定義されて以降、小動物臨床でも、その概念が広まりつつある。そして、2020年を迎え、1月も第3週に突入。National Obesity Awareness Week(1月13日~20日)へと差し掛かった。なお、同啓蒙週間は、イギリスを中心に普及しており、健康的な生活を送る上で重要な体重管理を意識して、万病の元とも言われる肥満を予防するために、様々な知識を知り、身に着けることを目的として設定されているとのことである。そこで、本稿では、今まで筆者が扱った「肥満に関する情報」を纏めて一挙に発信し、日本におけるNational Obesity Awareness Weekの浸透を僅かであっても促進したいと思う。

 

肥満とは、骨格から想定される標準体重よりも遥かに大きい体重のことで、アメリカで飼育される犬猫の6割近く、実に5000万匹以上が、それに該当すると言われている。また、この肥満に陥った動物は、乱れた腸内細菌叢を有し、循環器関節への負担が増加することに加えて、最大で2.5年も寿命が短縮するとされ、現在では、「肥満は治療を要する病気である」と考えられるようになってきた。しかし、獣医師による体重・体型評価とオーナーのそれには、約1段階分(9段階評価)の差が存在し、肥満を病気と捉えないオーナー愛犬の肥満は獣医師に責任があると主張するオーナーが居るという報告が上がっており、獣医療が目指すゴール(肥満=治療対象)は、このような茨の道を越えた遥か彼方に遠ざかっているのが現状である。故に、先の見えない道を一歩でも多く進むために、様々な研究機関および動物関連企業は地道な検証・啓蒙を重ねており、肥満になりやすい品種の特定、フード給与量の調整運動による理想的な体重管理法を模索して、そのコツをシンプルに纏めて提唱しつつ、客観性の高い肥満判定方法を考案しているのだ。

 

上記のことから、「肥満は病気である」という概念が、世界中の獣医師およびペットオーナーの共通認識となるまでには、まだまだ時間を要すると推察している。よって、今まさに肥満でQOLが低下している動物たちの健康・福祉を向上するために、本稿で紹介したNational Obesity Awareness Week、そして、以前記事の題材としたNATIONAL PET OBESITY AWARENESS DAYを通して、少しずつ、だが確実に、ペットの肥満を見つめ直すヒトが増えていくことを願っている。

これからも、肥満に関する研究を紹介していきますので、その都度、記事をご覧になって頂けますと幸いです。

 

参考ページ:文章内のリンクをご参照下さい。


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