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犬の難治性角膜潰瘍を内科的に治癒させる新しい点眼薬

投稿者:武井 昭紘

犬の難治性角膜潰瘍は、角膜上皮と実質が接着して再生していく機構の破綻が「治らない」という現象を引き起こしている病気で、点眼処置のみでは治癒経過を辿ることが出来ない角膜疾患として知られている。そのため、難治性角膜潰瘍には、デブリードマンや角膜切開術などによって、角膜組織の細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)を露出し、上皮と実質の接着を促す治療を適応することがある。つまり、視点を変えて「これらの現状」を見つめると、前述した外科的処置と同等の効果を有する点眼薬があれば、罹患犬に麻酔リスクを負わせることなく、外科手術の経験に依存することなく、犬の難治性角膜潰瘍を内科的に治すことが可能になると仮説を立てることが出来るのではないだろうか—–。

 

そのような背景の中、パリ大学および眼科専門の動物病院らは、ECMの一つ、グリコサミノグリカンファミリーに属するヘパラン硫酸の模倣化合物OTR4120を含有する点眼薬Clerapliq®を用いて難治性角膜潰瘍の犬11例の治療を試みる研究を行った。すると、6日~35日間の加療で、約83%の症例が改善することが明らかになったとのことである。

上記のことから、角膜上皮と実質を接着を促進するECMを補充する点眼薬は、小動物臨床にとって、犬の難治性角膜潰瘍の治療成績を大幅に向上させる画期的な薬剤となり得ると考えられる。よって、今後、大規模な臨床研究にてClerapliq®の有用性が検証され、この点眼薬が、難治性角膜潰瘍を抱える愛犬の外科手術に踏み切れないオーナーの「希望の光」になることを期待している。

これからの研究によって、Clerapliq®による点眼治療が奏効する眼科疾患が増えていくことを願っております。

 

参考ページ:

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31847217


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