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フラストレーションが貯まっている犬の表情について観察した行動学的研究

投稿者:武井 昭紘

祖先とされるオオカミに比べると、内側眼角挙筋(levator anguli oculi medialis muscle、LAOM)が発達している犬は、ヒトから投げ掛けられる言葉やヒトの一挙手一投足を具に理解しているかの如く、実に豊かな表情を見せてくれるコンパニオンアニマルである。しかし、小動物臨床およびペットライフにおいて、最もヒトと緊密に接していると言って過言ではない犬の表情と「それ」に適合した感情は、未だに完全な体系化には至っておらず、表情を受け取るヒトによって様々に解釈されているのが現状である。

 

そこで、ヨーロッパの大学ら(ベルン、リンカーン)は、犬の感情や問題行動の根源をより深く理解するために、犬の顔の動きをデータ解析するツールDog Facial Action Coding System (DogFACS)を用いて、 彼らの「あるタイミング」における表情を観察する研究を行った。なお、あるタイミングとは、「食べ物が貰えるという期待感の中で実際に食べ物が貰えなかった」という瞬間で、本研究では、期待感が高まった時にポジティブな(嬉しい)反応、貰えなかった時にネガティブな(フラストレーションが貯まる)反応が起きるとしている。そして、その結果、以下に示す事項が判明したとのことである。

◆犬のポジティブまたはネガティブな反応と表情◆
①ポジティブ:Ears adductor(両側の耳介基部を引き上げる)
②ネガティブ
・Blink(眼を瞑る)
・Lips part(上唇溝を引き上げる)
・Jaw drop(下顎を下げて口を半開きにする)
・Nose lick(鼻先を舐める)
・Ears flattener(耳を動かす力を抜いて垂れ下げる)

 

上記ことから、飼育環境下で、犬がネガティブに該当する表情を頻繁に見せる時には、食べ物に纏わることに限らず、何らかの期待していたイベントが発生しないことに対するフラストレーションを貯めていることが考えられる。よって、既に、愛犬の問題行動に悩んでいる家庭と、その相談を受けている獣医師は、ネガティブな反応の有無を観察し、これらの反応が出るキッカケを探ってみることが、(問題行動を)解決する方法を見付ける近道となるのではないだろうか。

今回紹介した研究をキッカケにして、1件でも多く、問題行動を起こす犬と、それに悩むオーナーとの関係性が改善していくことを願っております。

 

参考ページ:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31848389/


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