狂犬病は、多くの哺乳類に感染し、年間に60000人もの犠牲者を生む非常に危険なウイルス性疾患で、世界保健機構(WHO)が中心となった2030年計画によって、あと10年のうちに「撲滅すること」を目指している感染症として知られている。故に、世界的に放し飼いの個体は少なく、人々の生活に密接に関わっている犬へのワクチン接種は、防疫対策上、大変に重要なプログラムだと考えられており、既存の注射タイプの狂犬病ワクチンとは異なる、より効率的で、より経済的な新しいワクチンの開発が常に望まれている現状にある。
そのような背景の中、アメリカ獣医師会(American Veterinary Medical Association、AVMA)は、同会が発刊する専門雑誌JAVMAのオンラインニュースに、新しい狂犬病ワクチンの実現可能性に関する見解を発表した。なお、それによると、狂犬病ウイルス(リッサウイルス)を構成するPタンパクが生体の免疫力の維持に欠かせないインターフェロンの細胞内シグナル伝達系を担うSTAT1に結合して、その作用を阻害するといった一連の現象(2019年11月に発見されたもの)を抑止する新しいワクチンを開発すれば、完全な感染防御が成立するとのことで、2030年計画へ向けた大いなる前進であるというのである。
上記のことから、前段に記した理論に基づいて設計されたワクチンが製品化されれば、狂犬病に対する防疫に革新が齎されるかもしれない。よって、今後、この「夢のような」狂犬病ワクチンが完成する過程に注視していきたい。
参考ページ:
https://www.avma.org/javma-news/2020-01-15/discovery-may-lead-new-rabies-vaccines